ご立派様の宴
「この辺りだろ?なんかおかしな儀式やってるってのは」

 シブヤ、センター街。
 雑然とした廃墟の並ぶ中で、人修羅は辺りを見回していた。

「ええ、地下街では思念体めが確かにそう申しておりましたわ、主(あるじ)様」

 頷くキクリヒメが恐ろしそうに人修羅に寄り添う。
 ここはまるで都市の死骸。鉄筋の骨格を剥き出しにしたまま、コンクリートが朽ちて転がっている。

「なんだっていいわ……全部切り刻むだけよ……」

 煌天間近のカグツチに煽られて、ヤクシニーは艶やかな紅唇を舐めながら両手の剣をしゃりん……と鳴らした。
 長い睫の下、潤んだ瞳はむしろ爛々と輝いている。

「勇ましいわね。ふふ、感じちゃいそう……」

 形のいい唇が綺麗に弧を描く。
 金色の髪を払いながら空中ですらりとした足を組み直すサキュバスがヤクシニーの隣で嫣然と笑った。
 探す内に見つけたのは、やけに重厚な扉。
 押し開ければ中から妖しげな雰囲気が漂ってくる。

「イイわ……正解、って感じねぇ?」

 祭壇と魔法陣、そして魔術師らしいバフォメットと、マネカタが二匹。

「くそくそくそくそ! みんなボクたちがマネカタだからってバカにして!
こうなったら、「ごりっぱな悪魔」を召還して、みんなケチョンケチョンだ!」

「……そうです、その通りです!トットと、あの「ごりっぱな悪魔」を召還して下さい!
ごりっぱなマーラ様を召還して下さい!……ありがたやー。」

 口々に召喚を依頼する二匹のマネカタの前で、バフォメットは冷ややかな笑みを浮かべている。

「……………フッフッッフッ、先ほどから申し上げている通り、まだ召喚のときではなーいのです。
「マーラ様」はごりっぱな悪魔……万全を期して召喚に臨まねば、恐ろしい事態を引き起こーすでしょう。」

 勿体ぶるバフォメットの前に、ヤクシニーが進み出る。
 煌天を迎えたカグツチに灼かれた思考が、ヤクシニーを過剰に好戦的にしていた。

「なんだっていいわ、早くして。あたし、焦らされるのは嫌いなの」

 一刀を突き付け、くい、と、刃をバフォメットの喉に突き付ける。

「おい、やめろ。ヤクシニー」

 人修羅の制止も聞かず、ヤクシニーは刃をついと滑らせて、バフォメットの黒い毛皮に溢れる血を染みこませた。
 黒山羊の目に読めない表情を浮かべたバフォメットは、真っ黒い目でヤクシニーを見返している。
「……………フッフッフッ……どうなっても、知りませーんよ?」

 ふいとヤクシニーに背を向けたバフォメットが祭壇に向かう。

「……大丈夫でありましょうか、主様」

 不安げに囁くキクリヒメの脇で、サキュバスは無言のまま再び足を組み替えた。

「ELELOHIMELOHOELOHIM
 SABAOTHELONEIECHADIEREIECHADONAIJAH…」

「あぁ、堪ンない!これ以上焦らさないで!!」

 新たな敵の出現の予感に狂喜するヤクシニーが、魔法陣の脇に立っていた二匹のマネカタを突き殺した。
 悲鳴すら上げる暇もなかったマネカタから流れ出たマガツヒが、召喚されつつあるモノの中に渦を巻いて取り込まれる。
 泡を吹いて魔法陣から産まれつつあるものの反応が激しくなった。
 魔力が膨れ上がり、衝撃波となって人修羅達を襲う。
 大きく部屋が揺れた。外からではなく、間違いなく、産まれつつあるものからの波動。

「やだ。ちょっと、何か、ヤバイ感じよ?」

 サキュバスが動揺してヤクシニーの腕に縋った。

「SADAITETRAGRAMMATON
 SADAIAGIOSOTHEOSISCHIROSATHANTON
 …………AGLA AMEN……………………!!」

 部屋が、しん……と、静まりかえる。
 部屋一杯の瘴気が邪魔をして何も見えない。

「フッフッフッ……予定外の要素が多すーぎました。
 不完全な……だが、未知数のマーラ様を召喚してしまーった」

 バフォメットの声が消える頃、ようやく辺りの瘴気が薄まる。

「きゃ!?」

 キクリヒメが小さな悲鳴を上げる。
 魔法陣の中心に聳えていたのは……青緑色をした、巨大な勃起した男根そのもの。

「…ググ……ギ………………汝ラ……、
 ………ギ…………命ガ………………惜シク……グギ……ナイト……見エル…………食ラエ!!」

 先手を打ったマーラが、亀頭の先端から妖しげな霧を吹き出した。
 途端、マーラの姿がまるで射精したように縮んでいく。

「これは……!? うっ……げほっ!げほげほっ!!」

 思いきり妖霧を吸い込んだヤクシニーと人修羅が咳き込む。
 咳き込んでいる内に、段々、二人の視線がとろりと妖しくなっていく。
 あれほど好戦的だったヤクシニーがからりと両手の剣を落とした。
 ぶるりと一つ胴震いをして、人修羅が、そっと、キクリヒメの腕を掴む。

「主様……いかが、なされました?」

 不吉な予感を感じたキクリヒメが後退ろうとしても、人修羅は彼女の腕をしっかりと掴んでそれを許さない。

「……キクリヒメ」

「主様……?」

 恐怖に怯えた顔で、キクリヒメは己の主の少年を見上げた。

「……分カラヌカ……我ハ、汝ノ主デハナイ!!」

「逃げろ、キクリ!!」

 人修羅の口から出た二つの言葉に、キクリヒメは主を突き飛ばして逃げようとした。

「甘イゾ!」

 だが、掴まれたままの腕を引かれ、キクリヒメは人修羅の腕の中により深く抱き込まれる結果となった。

「おやめ下さりませ! 主様!! キクリの腕をお放し下さいませ!!」

「ククク…………コレハ堪ラヌ。逃ゲテミヨ……」

 人修羅の少年を乗っ取ったマーラが、好色げにキクリヒメの体に顔を押しつけその薫りを吸い込んだ。

「……我ノ好ム乙女ノ薫リ。ドレ、ココハヒトツ汝ノ処女ヲ捧ゲサセルトスルカ……」

 尻に手を回し、邪魔な衣服とマガタマを引きちぎると瑞々しい褐色の肌が零れた。

「あああ!主様……主様……、堪忍して下さりませ!」

 羞恥に体を丸めるキクリヒメを床に突き倒し、人修羅はゆっくりとのしかかった。



「……あっちゃー……これはヤバイわねぇ……」

 ゆらりと危うげな翡翠色の瞳を向けられてサキュバスは苦笑した。
 どうやら先程の霧は何らかの精神攻撃だったらしい。
 赤い唇から牙を覗かせて近づいてくるヤクシニーの狙いは、明らかに自分だ。
 凄みを増した瞳は湖のようにゆらゆらと揺れて自分を睨みつけてくる。

「ねぇ……アンタの唇って……柔らかくて美味しそうよねぇ……?」

「当たり前じゃないの。誰に言ってるのよ?」

 サキュバスは警戒して羽ばたいた。ヤクシニーと力比べなんか、絶対にしたくはない。

「ふふ……食べちゃいたい……」

 美しい顔に淫靡な表情を乗せて、ヤクシニーはサキュバスを引き寄せようとした。

「冗談じゃないわ!」

 背中側からキクリヒメの悲鳴が聞こえた。サキュバスはヤクシニーを避けて入ってきた扉を目指す。

(ここは、とにかく逃げなきゃ……! ごめんね、キクリヒメ……!!)

 魔法陣を突っ切ろうとしたサキュバスは、だがしかし、途中でぐいと引っ張られてあやうくつんのめる所だった。

「なに!?」

 サキュバスを引き止めたのは、まるで消滅したかのように縮んでいたマーラだった。
 矢印形をした彼女の尾に噛みついて引き止めている。
 スライム状のそれを引き剥がそうとしても、意外に力が強く、なかなか取れない。

「ああ、もう!離してよ!!」

「……手伝ってあげましょうか?」

 サキュバスの前に、ヤクシニーが立ちはだかった。くいと顎を上げられて、唇が重なった。

「んぅ……」

 強い力で唇をこじ開けられ、温かい舌がぬるり、と絡み付いてくる。
 同時に、何か流れ込んでくるものがあった。

(嫌っ! ……何これ。あたしの、中に、何か……が…………)

 のどの奥をぞわぞわと伝い落ち、腹の奥に落ちる。
 それと同時、体の奥で、ずん、と、蠢き出すものがある。
 サキュバスである彼女にとっては、よく知ったものである親しみのある感覚──性欲を、無理矢理体の内側から目覚め、させられる。



「主様……主様……お赦しくださりませ……このような無体な仕打ち……」

 引き裂いた着物の合間で、人修羅の指が円やかな褐色の胸を強く握った。

「ひっ……! お、お赦しを……主様……あんまりでございます……」

 緩く開いた人修羅の唇がかぷりと音を立ててキクリヒメの乳房に吸い付く。
 唇に押されて柔らかな肉がひしゃげる。ぬらりと舌先で乳首を弄えば、腕の中でキクリヒメが仰け反った。
 ちゅ、と窄めた唇が唾液に光る乳首を吸った。

「あ、あ、あるじさま……、キクリは……キクリは……」

 震える体をずり落ちた人修羅が、キクリヒメの微かに浮かぶ鎖骨に、鳩尾に舌を這わせていく。
 まるでナメクジの這った跡のようなてかった筋が、処女女神の肌を汚していく。

「……キクリ」

 人修羅の囁きが肌を震わせると、びくりと震えたキクリヒメが人修羅の肩を強く掴んだ。
 期待を込めて見上げてくる必死な視線に、だが人修羅は一つ笑みを浮かべただけで、するりと彼女の帯を解いた。

「あ、あるじさま……お戯れを、お止め下さりませ……どうか、どうか……」

 人修羅は無言のままキクリヒメの膝を開くと、布で覆われた小高い丘に顔を埋め、そこの匂いを嗅ぐ。

「あぁ……無体なっ!」

 布越しに乙女の甘酸っぱい匂いを堪能し、柔らかい肉の丘から谷あいへ、そして奥の窪地へと鼻先をずらしつつ、匂いを嗅ぎ、熱い吐息を吹きかけていく。
 キクリヒメは処女地を犯す生温い熱と微妙な感触に身悶えし、股に人修羅の頭を抱え込んだままで、その華奢な体をくねらせた。
 既に薄絹は染み出した蜜でしとどに濡れ、乙女の熟し切らぬ果実の密やかな芳香を漂わせている。
 それに誘われたように人修羅は舌を突き出し、布越しにキクリヒメの秘所を舐め上げた。
 張り付く布地ごと、女芯を吸い上げ、花びらを掻き分け、窄まりをつつく。

「なにとぞ……、そのように……、キクリを、嬲らないでくださいまし……」

 隠し切れぬ官能に頬を染めたキクリヒメが、唾液と愛液をたっぷりと含んだ布が立てる音から顔を背ける。
 ぐじゅ、ぐちゅり。
 直接は其処を舐め上げぬまま、腿の付け根、下着の際を、人修羅の舌が戯れに舐めていく。
 その度に感じる甘美な恐怖に、キクリヒメは震えて掠れた声で喘いだ。

「あぁ……!」

 羞恥とない交ぜに襲いかかる、乙女の知らぬその感覚に、足袋に包まれた爪先が慎ましく痙攣する。
 少年の頭が陰部を彷徨い蠢く度に、キクリヒメは切なげな、懇願の混じった声を上げるようになっていた。



 ぴちゃ、くちゅ、ちゅ……。
 床に膝を付いた女魔達の間から卑猥な水音が響いてくる。
 緑色のゲル状物体と化した魔王マーラと、それに魅入られた、ヤクシニー、サキュバスの立てる音である。
 彼女らの何処かにはまだ理性が残っているのか、時折苦痛に似た表情が浮かんだ。
 だが、力を失って縮みきった魔王に奉仕する女魔たちの表情は、淫然として、どこか挑発的である。
 サキュバスはボディスーツを半ばまで引き下ろして、豊かな胸で魔王の幹を擦りつつ、くちづけしては柔く歯を立てる。
 ヤクシニーは亀頭に顔を埋めるようにして、長い舌と唇で先端をちろちろと愛撫し、吸い上げている。
 女魔二人で抱え込むようにして、幹全体に手で腹で刺激を与えるのを忘れてはいない。

「魔王様……ん、早くぅ……」

 雁の下に噛みつきながらサキュバスが囁く。

「あぁ……! 物足りない……!」

 時折ごぶりと吐き出される緩い粘液にまみれて、ヤクシニーが。鈴口に舌を入れる。

『可愛イ奴ラヨ……モット我ヲ求メヨ……』

 粘液に汚れた細い指が幹を擦り上げる度、マーラは喜悦に質量を増やした。
 最初はほんの小さなスライムほどまで縮んだものが、4人の生み出す淫気を吸い上げて今や子供ほどにまで成長してきている。
 サキュバスとヤクシニーが競うように粘液に舌を這わせる。甘苦いその液体を啜る度に、二人の顔に更なる淫が湧いた。
 耐えかねたサキュバスがくいとボディスーツの股間をずらす。長い足でマーラの幹を抱え込むと、性器を直接擦り付け始めた。

「あはぁ……! ああぁん……きもちいい……っ!! マーラ様ぁぁぁん!」

 両手で幹を掴み、豊かな乳房で挟みつつ全身で幹を擦り立てる。全身をぬらぬらと粘液で汚しながら、表面の微妙な凹凸にクリトリスや乳首を擦り付けては羽根を尾を震わせて喘いだ。

「ちょっと!アンタばっかり、ずるいわよっ!」

「あ、アンタも、やればいいじゃない! ああんっ!いいっ!いいぃ!」

 サキュバスの姿に性感を刺激されたヤクシニーは、下履きの腰布を剥ぎ取ると、まるで挿入しようとするかの如く、マーラの上に跨った。
 薄い毛に覆われた陰部が、マーラの吐き出す粘液に汚れる。
 先端の凹凸に花芯と花びらと蕾とを擦り付けながら、ヤクシニーは粘液に濡れた手で両の乳房を揉みしだいた。

「ああぁ……欲しい、欲しいのに……もう、何で入らないのよ!!」

 股間を淫汁でぐちゅぐちゅと濡らしながら、焦れたようにヤクシニーが叫ぶ。
 淫魔と鬼女の淫姿はより凄まじいものになっていった。



 荒い呼吸に胸を上下させるキクリヒメの姿は、哀れなものであった。
 破かれた着物はまるで乱暴な手で裂かれた包装紙のようにキクリヒメの回りに飛び散っている。
 儚く処女を守る下着は、唾液と乙女の淫水に濡れてぴったりと張り付き、その形を隠してはいない。
 尖った顎を仰け反らせたまま、しどけなく身を震わせる乙女の足は、心ない悪魔の手で大きく開かれて鑑賞されていた。

「……もう、おゆるしくださいまし……」

 細い声が懇願すると、布を張り付かせた部分が僅かに蠢いた。
 後ろの窄まりまで食い込み、露わになっていることを、まだ、乙女は知るまいに。

「あるじさま……」

 声を吐く度に濡れ光る乳首が震えて上下する。晒された喉が白く蠢き、唾液を嚥下する動きまで見えていた。
 少年は、乙女に足を開かせた恥辱の姿勢を強いたまま、半身を扱いていた。
 乙女であっても、その行為がなにかいやらしく忌まわしいものだと分かる。だが、己を見つめながら行われるその行為に、乙女は官能にも近い感覚を得始めていた。
 少年の餓えた視線を感じて、乙女の花びらがとろりと蜜を垂らす。招くように閉じては開き、また、男を知らぬ通路がきゅうと締まっては誘ってみせる。
 その光景に少年が手を早めれば、自分の体がどのように淫らに蠢いたのかと乙女は昂ぶってまた蜜を吐いた。

「お情けを……主様」

 身悶えたキクリヒメの手を、不意に人修羅が引いた。
 身を起され、擦っていたモノを見せられてキクリヒメが思わず顔を背けた。
 天を衝き脈動する、肉色を見せる塊。成熟しきらないせいか、それほどグロテスクではない男根にもキクリヒメは小さな悲鳴を上げた。

「………………濡ラセ、咥エロ」

 人修羅の口から出た魔王の命令に、キクリヒメは後退った。口元に押しつけられるそれから必死で顔を背ける。

「……本当ハ、抱カレタイノダロウ? コノ『俺』ニ……」

 その言葉にひくっとキクリヒメの肩が震えた。潤んだ瞳が、人修羅を見上げる。

「……あるじさま……」

 キクリヒメの小さな唇から、微かな、溜息が漏れた。



 二人の女魔は、マーラの亀頭に性器を擦りつけながら絡み合っていた。
 濡れた乳房が二人の体の間で押し潰されてひしゃげる。
 お互いの女の部分を指で犯し合いながら、ヤクシニーとサキュバスは胸で腹でぬるぬると感じ合っていた。

「んふ……ねぇ、アタシが淫魔だってコト……教えてあげる」

 媚薬の毒霧と官能に酔った顔で、サキュバスがヤクシニーの耳元で淫靡に囁いた。

「……えぇ?」

 淫魔は淫蕩な指を鬼女の股間に埋めた。
 女の谷間をするりと撫で、クリトリスの皮を剥く。
 そして、敏感な肉を粘液まみれの指でにちゅにちゅと押し潰すように撫で回した。

「あぁ……うぅんっ……!」

 意識を灼く強烈な快感に、ヤクシニーが腰を退く。

「……逃がさないわよ」

 サキュバスはもう一方の腕を回して、鬼女の尻を押え込むと、指先で尻の肉を押し開いた。

「ねぇ、ヤクシニー……貴女、お尻は好き?」

 熱い囁きと一緒に、サキュバスの長い指が、ずちゅ、と、ヤクシニーのアナルに押し込まれる。
 その感触に思わず腰を浮かせば、クリトリスを撫で回す指が、強く、挟み込むように蠢く。
 ヤクシニーは狂気のような苦痛と快楽に喘いでは、行き場のない腰を淫らにくねらせた。

「ああぁぁ……!!」

 長い指に背後からアナルをぐちぐちと犯され、同時に前ではクリトリスを扱くように捏ねられる。
 掠れた声でヤクシニーが悲鳴を上げれば、男に餓えた音を立てて花びらが愛液を噴いた。

「あら、狭いのね……こっちはまだだった?」

 押し開かれた尻が拒絶するように細い指を締め上げる。
 きつくまとわりつく粘膜にもう一本指を押し込み、開くように指を広げる。

「いやぁ……それ、やめてぇぇ……」

 熱い粘膜に感じる空気の冷たさに、ヤクシニーは尻を振った。
 暴れても淫魔の指先はしっかりと絡み付いて、狂いそうな程の快楽を与えてくる。
 ヤクシニーが、ずり落ちて床に這い蹲った。
 その尻を上げさせて、サキュバスは仮初めの主に微笑みかけた。

「……マーラ様、ヤクシニーのお味見、なさいますかしら?」

 緑色をした亀頭の先端に、口が、開く。

 サキュバスの指でくちりと押し開かれたヤクシニーの脚の奥に、マーラの舌が伸びた。

「あぁぁぁ……!」

 藤色の谷間に濡れるピンクの秘花。
 開かれた花びらに、たっぶりと唾液を塗りつければ、薄い肉が期待にふるりと震える。
 舌先が、桜色に充血して待ち受ける、雌の粘膜を押し開いた。
 ずるり。
 狭い入り口を掻き分け、熱い肉を抉りながら、長い舌が沈んでいく。
 ずぞぞぞと敏感な膣肉を這い上がる悪寒と──犯されていく愉悦。
 それが、ヤクシニーの女を犯す舌を、絞り上げる動きで締めつけた。

「あひいぃ……! あぁ……たまんない!」

 硬い舌先が、ヤクシニーのピンクの襞をゆっくりと押し開きながら丁寧に舐めていく。
 尻に埋まっていたサキュバスの指が、ずるりと引き出され、また、にちにちと犯しにくる。

「お尻……お尻もいぃ……!」

 粘膜の拡がる感覚に、ヤクシニーは喜悦の声で叫んた。
 同時に、クリトリスを指できつく抓られ、身悶えて、重みで垂れた乳房がぶるりと揺れる。
 ヤクシニーの花びらから溢れた蜜が、つぅと糸を引いて落ち、床をぴちゃ……ぴちゃ……と汚していく。

「ねぇ……もっと、ぉ……」

 マーラに向けて尻を突き出し、ヤクシニーは更なる愛撫をねだった。
 己の指で入り口の花びらをこじ開け、より深くまで誘い込む。
 むっちりとした藤色の尻の間に、緑色の亀頭がに開いた口が、押しつけられ、埋まってゆく。
 ちゅくちゅくと舐め吸い上げる音の度に、ヤクシニーが眉を寄せて喘いだ。

「あぁぁん……うぅ……あひぃ……」

「ふふ……私も感じてきちゃう……」

 サキュバスは隠微に笑むと、己の尾を蜜を垂らす花の奥へ押し込む。
 細い尾は、その通路を満たさぬまま、子宮口をみちみちと押し開くように突き上げる。

「……あぁん……イイわ、深いのイイ……!」

 サキュバスは白い胸と赤い乳首をヤクシニーの濡れた肌に押しつけ、淫らな声で喘いだ。



「……主様になら、キクリは抱かれとうございます」

 頬を朱に染め、座り込んだキクリヒメが目を伏せる。
 更なる辱めを受けようとしている唇が、ふるり、と、戦慄いていた。

「……ですが……そなたは、主様ではなかろうが!」

 露わな肌を腕で隠し、乙女は不埒者を睨みつける。
 口惜しげに噛んだ唇。
 黒い瞳は悔し涙で濡れている。

「淫魔王めが! ……下がりおれ!!」

 凛と叫んだ声は、悲壮な程、誇り高い。
 それを聞いた少年の──魔王に取り憑かれた少年悪魔の顔に、嘲笑が浮いた。

「……敵ト知リツツ、フシダラニモ股ヲ濡ラシテ喘イダノハ誰ダ?」

「くっ……」

「乙女ダト?……聞イテ呆レル!
 尻ノ穴ヲ舐メクジッテモ、ヒイヒイト声ヲ上ゲテヨガッテオッタ癖ニ!!」

「やめて!」

 屈辱に顔を背けたキクリヒメの顔に、ぬるりと少年の性器が押しつけられ、粘液が頬を汚した。

「……我ガ触手ニテ、処女ヲ奪イ、犯シ抜イテヤッテモヨイノダゾ?
 コレハ我ガ情ケ。モトヨリ逃ゲ場ナドナイ事ヲ忘レルナ。
 大恩ヲ感謝シ、唇ニテ我ニ奉仕スルガヨイ」

 赤い先端が、柔らかな唇を押した。
 わなわなと震える唇が、押されるままにゆっくりと開き、征服者に蹂躙されていく。

「両手デ支エ、扱キ、吸イ、舐メヨ。愛シイ主ノ肉棒デアロウ? ……子種ノ袋モシッカリト、ナ」
 喉を衝かれて、キクリヒメの瞳から一筋の涙が溢れては落ちた。
 求められるままに、おののく指で幹を撫で、男根を舐めては吸い上げる。
 主のものと思えばひどく愛しい。
 キクリヒメは、目をきつく閉じて耐えた。

「ふ……む……ぅん」

 キクリヒメは少年の性器へ一心に奉仕を行っていた。
 穢れを知らぬままであった唇に少年の赤く充血した先端を咥え、ちゅぷちゅぷとしゃぶっては吸い上げる。
 震える指先で脈動する幹を撫で、支え、溢れる滴を追うように筋、血管へ舌先を這わせる。
 命じられるままに、根元の塊を揉みしだき、唇を寄せ、しゃぶりすらした。
 乙女の唇が幹を食み、舌を突き出して苦い汁を拭い上げるたび、分身へ血が集っていく。

「主様……」

 キクリヒメは赤く充血していく逸物を恭しく両手で支え、口を開き、白い歯の合間へくわえ込む。
 口腔の中で柔らかい舌に舐め立てられる。
 乙女の頬が凹む度に射精を耐えねばならなかった。

「……モウイイ」

 限界まで張りつめた所で、唇から引き抜く。
 ふ、と、どこか虚ろな表情で奉仕していたキクリヒメが、ふるふると震え出す。
 乙女の唾液に濡れ光る少年のそそり立った逸物は、今にも弾けそうに張りつめて脈打っている。
 少年が、乙女の最後の守りである薄布を引き裂いた。
 まさに悲鳴のような音を立てて裂けた絹の隙間から、淡い茂みが零れた。

「嫌っ! おやめくださりませ!!」

 再び破れた着物の上に突き倒されたキクリヒメが、両手で秘所を覆い隠す。
 その手を払いのけようとして、考え直したように少年は顔を上げた。

「……あ、れ……キクリ?」

「あるじ……さま……?」

 突然我を取り戻した人修羅が顔を真っ赤に染めた。
 目の前には、太股に裂けた下穿きを絡めただけの姿のキクリヒメ。
 腹に反り返るのは、キクリヒメの唾液で濡れた脈打つ怒張。
 慌てて身を起そうとして、だが、キクリヒメが少年の手を引く。

「主様……キクリを抱いてくださりませ……」

「このまま魔王の手に落ちるしかないのならば……せめて、主様の手でキクリを女にしていただきとうございます」

「キクリ……」

 秘所を覆っていた手が外される。

「キクリはいけない女です……敵と知りつつ……雄を口で慰めながらも、主様を思い、このように……」

 手の間では、閉じられた合わせの間から滴るほどの蜜が溢れている。
 濡れ光る桜色の合せに触れると、驚くほどの蜜が人修羅の指を濡らした。

「こんなに……」

「主様の手で……どうか、女にしてくださいまし……」

 震える膝頭を、キクリヒメがゆっくりと開いていく。
 硬く閉ざされていたキクリヒメの女の部分が、花開くように少年の眼前へ晒されていく。

「キクリに……どうか、お情けを……」

「……いいのか」

「はい……」

 つやつやと光るピンクの花びらを押し広げると、狭く柔らかそうな通路の入り口が、こぷり、と粘度の高い蜜を吐く。
 それだけで、ああ、と呻いて仰け反ったキクリヒメに、人修羅が一つくちづけを落とす。

「んむぅ……んん……っ」

 慎ましく吸い付いてくる桃色の膣口を少年のまだ細い指が捏ねた。
 すぐにはしたない音を立て始めた肉の中を、探るように人修羅が指を動かす。

「ひぁ……ぁ、ど、どうか、嬲らないで……くださいまし……」

 涙を浮かべて震えているキクリヒメに、人修羅が戸惑い気味に声を掛ける。

「あのさ……俺も、初めてだから……。……きつかったら、言えよな」

「あるじさま……」

 人修羅は指を抜くと、赤く脈打つ先端を押し当てた。
 濡れそぼった粘膜同士が、舐め合う様な音でくちゅ、と、触れ合う。

「ふっ……」

 少年の吐息と共に、熱い塊が、ゆっくりと、キクリヒメの柔肉を掻き分けて侵入していく。

「あぁ……!!」

 狭い肉の通路が、熱く硬い肉に押し開かれる。
 先端もまだ入っていないというのに、裂けるような痛みにキクリヒメが仰け反った。
 褐色の肌に汗が浮く。
 力任せに絞られるような痛みに人修羅も顔を顰める。

「力抜けよ……、入んねぇ……」

 荒い息で胸を喘がせるキクリヒメの脚を、抱えて大きく開かせた。
 狭い肉に押し戻されそうになるのを、欲望のままに掻き分け、押し込む。
 ずるりと、少年の怒張が拒絶する肉の奥へ処女膜を裂いて滑り込んだ。

「あぁっ!!」

 苦痛の声を上げて浮いた腰を、逃がさぬように抱え込む。
 熱く脈打つ杭に貫かれたキクリヒメの体が、男をくわえ込んだ場所をぴくぴくと震わせる。

「……あるじさま……」

 キクリヒメはか細い声をあげて、少年の背を抱いた。

「キクリ……」

 深く深く結ばれた場所をそのままに、お互いの唇を確かめるように重ね合う。
 柔らかい肉から、血の混じった愛液が溢れる。
 脈打つ雄をゆっくりと引くと、破瓜の血に薄赤く染まっているのが見えた。

「……痛くない?」

「少し……でも、ああ……見ないでくださいませ。……わたくし、淫らな女ですわ」

 呼吸の度に締め上げては腰を震わせるのは、苦痛だけが原因ではないと、キクリヒメは言外に訴える。



 膣からぬるりと引き抜かれたマーラの舌に、ヤクシニーが不満げに尻をくねらせる。

「や……、魔王サマ……もっとぉ……」

 サキュバスの指も引き抜かれ、物足りなさに顔を上げる。
 天を衝く緑色の巨体は──すでに、ヤクシニーの背より高く聳えている。

「え……?」

 目の錯覚かと瞬くヤクシニーの脚が、ぐいと開かれた。

「……待タセタナ。タップリト楽シムガヨイ!!」

 太股に絡み付いたのは、大小さまざまの、緑の触手。
 とてつもない量の触手がわさわさとからみつき、ヤクシニーを引き寄せる。

「えっ?あっ!?」

 充血した花びらを、何本もの触手がつまんで広げた。
 餓えて開閉する膣口に、先端に大きなカリ首をつけた極太の触手が押し当てられる。

「あはぁぁぁああっ!!!」

 極太の触手が、舌先すら締めるほど狭く縮まっていた膣を限界まで押し開く。
 子宮を押し上げるほど深くまでを、太い触手で一息に衝かれ、ヤクシニーの体はがくがくと震えた。
 触手の形に丸く拡がった膣口が、限界を訴えてぐちぐちと触手を締め上げる音を立てた。
 ずるりと、ヤクシニーの中から引き出された触手は恐ろしく長い、そしてまた、そこが帰る場所だといわんばかりに、ずぶり、と、ヤクシニーの膣の中に入り込む。
 柔らかく締め上げる肉襞は、硬く太い触手で蹂躙され押し潰され、強烈な陵辱の感覚だけを伝えてくる。
 床に崩れたヤクシニーの乳房に、人の指ほどの太さの触手が巻き付いた。
 大きく揉みしだくようにその柔らかな形を歪ませては、くりくりと先端で乳首を転がす。

「あひぃ……ぃ……」

 ずぷっ、ずぷっ、と、腕ほどもある触手が、ヤクシニーの花びらの間でリズミカルな出没を始める。
 その度に体ごと押し上げられ、ヤクシニーは失神間際の快楽に茫然とした。

 ヤクシニーの脇ではサキュバスが触手に両手を囚われて吊り下げられている。
 細い触手が何本もボディースーツの間から入り込み、また、寄り合わさった触手がずぷずぷと膣と尻を犯していた。
 触手の塊が膣を突き上げる度に、サキュバスの体が派手にしなる。

「お願いぃ、抜いて、抜かせてぇ……!!」

 緑色の触手に混ざって、彼女の尻から伸びる黒い尾が、股の下で丸く輪を描き、その先は彼女の花びらの中へと繋がっている。
 触手達がざわざわと奥で蠢く度、尾の先端が敏感な奥で押されて子宮までを犯すのだ。

「ひぃ……、壊れる、壊れちゃうぅ……!」

 尾の先端は、返しのついた矢印形になっている。
 それほど鋭くもないその尖りがつぷつぷと甘く子宮口を押し開く。
 その度にサキュバスは狂ったような声を上げた。
 そして、奥でからかう様に尾の先端を突き上げるのだ。
 触手達はサキュバスを激しく擦り立てて犯すわけではない。
 だが、奥で、うねり、擦れ、ざわめく動きは、どんな激しい出没よりも複雑にサキュバスを刺激する。

「あぅ……うぅん……!」

 触手の先端が代わる代わる、赤く膨らんだクリトリスを押していく。
 這い登った触手は、背筋を撫で、乳房を包み込み、さわさわと撫で上げる。
 赤い唇に這い登った太めの一本は、まるで男性器そのものの姿で、サキュバスの口へ入り込もうとする。

「ふ……ぅ」

 サキュバスは自ら口を開いてそれを招き入れる。
 じゅぷり、淫らな音を立てて触手を唇でくわえこみ、吸い上げる。すると、同じくらいの太さの触手が我も我もと這い登ってきた。
 扱かれる度、びくびくと蠢くそれらに、サキュバスは淫猥な表情でキスをした。

「……ねぇ、一緒にあたしを犯してちょうだい。拡がっちゃうくらい、スゴイのが欲しいの……」


「あひっ……ふ……うぅん……ふぁ……っ!」

 床に這い蹲った姿勢で、極太の触手に犯されながら、ヤクシニーは淫らに腰を振っていた。

「すごいぃ……すごいの……っ!」

 突き上げの度に体が押されてずり上がり、大きな乳房が床で擦れた。
 つるつるの床に自ら乳首を擦りつけ、触手に犯される快感に腰を振る。
 狭く締め上げていた膣をえぐるように突き上げ、先端が中でくねる。
 その度にヤクシニーは凄まじい雌の快楽に貫かれて、狂ったような声を上げた。

「もっとして!もっと、もっと!ぐちゃぐちゃに犯してぇ!」

 四つん這いになって尻を振る姿は、まるで紫の美しい獣のようであった。
 ヤクシニーがもどかしげに、手元に伸びてきた一本の触手を捕え、噛みつく。
 男根に似たそれに鋭い牙と爪を突き立てると、それは藻掻くようにビクビクと跳ねる。

「あぁ……痛い? そうよ、もっと、あたしの中でのたうって……」

 極太の触手までが苦しげにヤクシニーの中で暴れるのを、彼女はうっとりと感じては尻を振った。
 血液にも似た緑色の汁がヤクシニーの肌をべっとりと汚し、饐えた匂いが拡がる。
 その液体をぺろりと舐めて、痙攣する触手を口に入れた。
 逃げようとする触手を牙を立てて食いちぎると、マーラの巨体までが苦しげに震えた。

「ヤメンカ!」

 細い両腕を触手で捕え、極太の触手で裂けるほど突き上げる。
 満足げに溜息を洩らしたヤクシニーが、甘えた声で腰を突き出す。

「イイわ……そうよ、もっと……」

「……トンデモナイ女ダ……」

 血と体液の匂いに興奮する鬼女を扱いかね、マーラは太い触手で両腕ごとヤクシニーを締め上げた。
 体に絡み付いた触手は、凄まじい力で腕ごと体をきつく締め上げる。

「か……、はっ」

 血が止まりそうな締め上げに驚いて、ヤクシニーは触手を引きちぎろうとする。
 だが、どんなに渾身の力で体をうごかしても、触手は更に体を締めつけてくるばかりだ。

「(このあたしが……力で、負けるなんて……)」

 息苦しさに気が遠くなる。
 ぐったりとしたヤクシニーの中から、ずるりと触手が引き出される。
 喪失感に悶えたヤクシニーを吊り上げると、マーラはヤクシニーに訊ねた。

「少シハ懲リタカ?」

 つっ……と、細い先端でヤクシニーの開いた膣口を捏ねる。

「……ちくしょう」

 低く呻いたヤクシニーのクリトリスを擦り上げると、太腿を伝い落ちた愛液が床に染みを付けていく。

「モット、仕置キガ必要カ」

 マーラはヤクシニーを再び床に這い蹲らせ、そのアナルに触手を伸ばした。

「あ……っ!そっちは……!」

 つぷつぷと細い触手が密やかな窄みを粘液で濡らす。
 嫌がってくねる女体を特に太い触手で押さえ付け、なおもマーラはヤクシニーの尻をくりくりと虐めた。

「クク……サスガノ鬼女モコチラハ弱イトミエル」

 入るべきではない場所を広げられる感触に、ヤクシニーが逃げようと足掻く。
 その脚を押さえ付け、マーラはぐいと尻の肉を押し開く。

「いやぁぁあ!」

 つぷりと浅く押し込まれた触手に、ヤクシニーが痙攣する。
 出すための穴を逆に開かれるおぞましい感触に、ヤクシニーは背を逸らして喘いだ。

「許して……お尻は、だめなの……」

 ヤクシニーは床に顔を押しつけられたまま細い声で懇願する。
 だが、それをマーラが聞くはずもなく、ヤクシニーのアナルは、更に数本の細い触手に押し広げられる。

「仕置キト、言ッタデアロウ」

 にゅるりと伸びた太い触手が、広げられたアナルに触れる。
 太腿はがっちりと固定され、尻を高く上げたまま身動き一つ許されず、恐怖に震えていた。

「いや……怖い……」

 嬲るように尻肉の合間を触手がねっとりと這い上がる。
 一度背筋まで這い上がってその長さを示した後に、からかうように膣の中へ押し入った。
 口を開けた膣を犯しその太さを教え込み、ぐいと子宮を突いてはヤクシニーを悶えさせる。

「抜かないで……もっと、突いて……」

 きゅうと締め上げたヤクシニーの膣を気紛れに突き上げ、そして残酷に引き抜かれる。
 ヤクシニーの愛液でぬめる亀頭で、ぐちぐちと入り口をくじる。
 背中を震わせるヤクシニーのアナルへ、触手の先端がずるりと埋まった。

「あぁぁ……」

 悲鳴すらか細く吐き出す。
 肛虐の恐怖に震える花びらが、その意志と裏腹にじっとりと蜜を垂らす。
 奇妙な尾のように震える触手が、亀頭に似た先端を、ぐち、ぐち、と、深く押し込んでいく。
 その度にきつく固定されたヤクシニーの体が悶えた。

「やぁああ……!抜いて、抜いてぇ……!」

 暴れようとするヤクシニーの花びらへ、再び極太の触手が押し込まれる。
 薄い肉壁を隔ててぶつかる二本の触手の感触に、ヤクシニーは声もなく仰け反った。
 元から体力のある彼女は、カンタンに気を失うことができない。
 おぞましくも凄まじい快楽に頭を振り立てては、きつく触手に締め上げられて苦鳴を上げた。

「あうぅぅ……、はうっ! んぁああ……」

 低い声で藻掻きながら、ヤクシニーは身悶えることしかできない……。


 初めての快楽を分かち合う為に、キクリヒメと人修羅は未成熟な体を擦りあわせていた。

「んん……ぅんっ、あぁ……」

 ちゅぷりと音を立てながら人修羅がゆっくりとキクリヒメの中に突き立てた男根を動かす。
 桃色の秘裂が挟み込むようにきゅうと締め上げ、動きに合わせてつっ……と、蜜が溢れる。

「せま……」

 痛いほどの締めつけに眉を寄せながら、人修羅はゆっくりと腰を動かした。
 ずぷっ、ずぷっと音が立つ度に、キクリヒメは切なげに裸身を震わせては仰け反る。
 苦しげにきつく寄せられた眉とは裏腹に、漏れる喘ぎ声は官能の色を帯びて淫らに響いた。

「あぁん……あぁっ、んぅ……んん」

 微かな動きで、時折もどかしげに男根を擦りたてては、快感を貪るのもままならぬらしい未熟な腰が揺れる。

「あ……あるじ……さま……」

 少年のまだ細い肩に手を回し、キクリヒメが掠れた声で囁く。

「キクリの……キクリの躰は……如何ですか?」

「うん……すっげー、気持ちいい……」

「んっ……う、うれしゅう……ござります……」

 キクリヒメは紅く染まった頬のまま、面映ゆそうに微笑む。

「主様……もっと、愉しんでくださいまし……」

 忍びやかに人修羅の腰に絡み付いた太腿が、そっと、脇腹を撫で上げた。

「キクリも……その方が、嬉しゅうございます」

 少年の背を引き寄せ、掠れた声が囁く。
 恥ずかしそうに上気した頬とは裏腹に、瞳は官能の色にとろりと溶けて潤んでいる。
 ささやかなキクリヒメのおねだりを察して、人修羅は細い腰を引き寄せた。柔らかい女の肉の感触に、僅かに目を細める。

「……もっと欲しいなら、そう言えよな」

 キクリヒメの脚が、抱え込むように人修羅の腰を抱いた。
 自ら根元まで男根を咥え込んで、腰を揺らしてはあえかな官能の声を漏らす。
 キクリヒメに、もう破瓜の苦痛の影はない。
 人修羅は、遠慮なく、キクリヒメの狭い肉壷を突き上げ始めた。

「んぁっ……あぁん!あぁ……っ!」

 ちゅぷっ、じゅぷっ、じゅくっ、とリズミカルに花びらが音を立てる。
 充血し艶やかに紅く染まった秘所は、一層狭く、きつく、愛しい男根をもてなした。
 男根を根元まで咥え込んでは、奥を掻き回される官能を離すまいと、キクリヒメは人修羅の背にしがみつく。
 濡れた肉が絡み付き、ちゅぷちゅぷとしゃぶっては密着して吸い上げる、とろけるような快楽に、人修羅も思わず声を上げていた。

「くぅ、……ぅ、ぁ……」

 淫肉を味わうのが初めての人修羅は、きつい締め上げの度に射精を耐えねばならない。
 処女であったキクリヒメを征服したという愉悦と、未熟な女体を肉の快楽に酔わせているというささやかなプライドが、童貞であった人修羅を堪えさせている。
 だが、キクリヒメの粘膜は射精を促すように人修羅のペニスを柔らかく包み込み、雁首全体を包むようにじゅるりとねぶっては、肉ひだで幹の表面をぬるぬるとしゃぶり上げた。
 柔らかい肉が締め上げて擦る感覚に気が遠くなる。
 少しでも多くの快楽を味わおうと、快楽に濁っていく意識の中、人修羅は機械的に腰を振っては肉棒を擦り立てた。

「んぅっ、あっ……!主様、……もっと、もっと……!」

 下腹同士を密着させて更にずくずくと奥を突き上げると、クリトリスを押されたキクリヒメが喜悦してまたきつく締め上げる。
 柔らかく密着する裸の胸。これ以上なく淫らな喘ぎ。与えた快楽を悦ぶ──女の顔。
 普段からは想像も出来ぬほど乱れているキクリヒメに、今更ながらに気が付いて、人修羅の辛抱が遂に砕けた。

「やべ……、キクリ、出る……!」

「あぁ……出して、出してくださりませ……キクリの中へ!」

 奥まで突き入れた勢いで、キクリヒメの中がきゅうと狭くなり、人修羅の熱が弾ける。
 断続的に吹き出す精液がキクリヒメの中にどくどくと注がれた。

「あぁ……熱いですわ。でも、まだ、こんなに……」

 射精してもなお硬いままの、若い人修羅の肉棒をキクリヒメは濡れた蜜壷で擦り上げる。
 肌を触れさせたまま、息を荒くする人修羅の頬に、そっと唇で触れた。

「もっと、もっと、愛してくださいませ、主様……」

 愛しい主の背を抱いてキクリヒメが囁く。
 はにかむように笑んだ顔は、どこか淫蕩な影を纏っていた。
 人修羅は、応えるように、また、白濁滴る肉の中を突き上げ始めた。

「アア……キクリ、沢山、愛シテヤルヨ……」


 サキュバスは顔の前に突き出された幾本もの触手に代わる代わるしゃぶりついていた。

「あむぅ……んむ……あ、駄目だってば、あぁ……ん」

 相変わらず小手高に吊り下げられたまま、白い乳房の間を這い上がっては口元に至ろうとする触手達を唇で舌で愛撫していく。
 触手達がうねる度に白い乳房はゆがみ、ひしゃげ、男根そっくりの触手達がその谷間に這い上がろうとして争っては乳肉をつつき上げる。
 ご機嫌を取るように乳首をねちょねちょと押し込むものもいた。
 サキュバスは謎の粘液を滴らせながら口を汚す触手を、赤い唇でしゃぶり、吸い上げる。
 舌を突き出して先端をちろちろと舐めると、我も我もと触手達が這い寄った。

「ねぇ、あなたたち、そろそろ、中にちょうだい……」

 極太の触手に口づけながら、サキュバスが淫靡に囁いた。
 彼女の股間は細い触手たちに蹂躙されていたが、彼女はそれでは足りないらしい。
 男を犯しては快感を愉しむサキュバスらしく、彼女はこの状況を楽しんでいる。

「んっ……」

 太腿と膝とを使って、まとわりつく触手達を引き抜くと、蜜にまみれた尾を振って追い払った。

「ねぇ……来て」

 太い触手が二本、サキュバスの両脚を這い上がって固定する。
 希望どおり、ヒトの男根にしては太い位の触手が、彼女の欲しがって蠢く花びらにあてがわれた。

「あぁああ!!」

 ずぶり。
 左右に蠢きながら肉を掻き分けて侵入してくる触手に、サキュバスは喜悦して身を震わせた。
 太い触手が探るように肉襞を押し上げ、膣を貫いてはサキュバスの子宮を揉むように押し上げる。
 不満そうにざわめく細い触手が、サキュバスのクリトリスに絡み付いては粘液を擦りつけた。

「やぁぁん!すごぉいぃ!!」

 太い触手を堪能するように、サキュバスは不自由な尻を懸命に振りたてる。
 自らごりごりと表皮に肉襞を擦りつけては、官能を楽しむ。

「…………」

 まるで触手を犯すように動くサキュバスの尻を、マーラはじっと観察しているようだった。


 ちゅぷちゅぷと音を立てる花びらの側へ、もう一本、同じ太さの触手が這い寄ってゆく。
 花びらをめくりあげては、入り込む隙間を探して、先端を突き込もうと試みる。

「あ……、なに?」

 もう一本の動きを感じたサキュバスは、驚いて腰の動きを止めた。
 脚を絡め取った触手が、ぎち、と、限界までサキュバスの脚を左右に開く。
 探るように動いていた二本目の先端が、一本目の茎と膣の合間に、ぐいと押し入ってきた。
 先に入っていた一本が押されて腹の中をぐいぐいと突き上げる。
 後の一本が、ぐり、と先端をねじ込もうとして、入り口で暴れた。

「あぁ……ん!む、無理よぉ……!」

 限界まで拡がったサキュバスの膣へ、陸揚げされた魚のように蠢きながら、ずる、ずるりと、二本目の触手が入り込んでゆく。
 逃げようとしても、ぎっちりと脚を掴んだ太い触手が逃げさせてくれない。
 逆に更に脚を押し開かれ──ずくりと、二本目の触手が奥に達する。
 二本は中で触手が争うようにくねり、代わる代わる最奥を突き上げ、ぬるぬると肉襞をえぐり上げてはサキュバスを悶えさせる。

「あぁん……、ひ、拡がっちゃうぅ……!!」

 ずるりと抜けていっては、また二本が狭い肉を押し分け、中でより奥へと争うように擦れる。
 限界まで開かれ擦られる感覚に、サキュバスは唾液が垂れるほど喘いだ。

「あふぅ……んぁ……あぅぅん!」

 太い触手に追いだされた形になった細い触手達が、不満げに肌の上でざわめいている。
 何本もの触手がサキュバスの股間を這い回っては敏感な粘膜へ音を立ててすり寄っていった。

「いいっ……、あはぁ……、ん、いい……っ!」

 濡れた先端が拡がった花びらを辿り、奥の窄まりをつついては濡らす。
 クリトリスには細い触手が密集し、皮の中に入り込んだり擦り上げたりする。
 一際細い触手に尿道口までを擦られてサキュバスの躰が仰け反った。

「あぁ……駄目、そこ……おしっこ出ちゃう」

 それでも、極細の一本が、嫌がるサキュバスを虐めるように、つるりと尿道の中に入り込んでいく。

「駄目ぇ!」

 サキュバスは悲鳴を上げて身をくねらせた。
 尿道とクリトリスを荒っぽくぐいぐいと愛撫され、サキュバスは腰を震わせる。
 ただでさえ太い触手が細い腹を圧迫しているのだ。
 押し潰された膀胱は必然的に中の水分を排出しようとする。

「駄目、あぁ、クリちゃん押しちゃ駄目!もれちゃうぅ!」

 触手達はサキュバスの脚をM字に開いて高く吊り上げた。
 はっとして顔を上げれば、もじつく股は中央に聳えるマーラの顔の前に晒されている。

「……久々ノ女ノ蜜水、味ワウトスルカ」

 かぱりとマーラの口が開いた。
 嫌悪感にサキュバスが腰を引こうとする。
 だが、触手達はがっちりと脚を支えたまま、マーラの口にサキュバスのおしっこを飲ませようとして、更に意地悪く蠢きだした。

「やだ!やめてぇっ!!」

 尿道を押し開き、激しくクリトリスを擦り上げて、サキュバスの我慢する力を抜こうと動く。
 膣に入り込んだ二本の触手は、ぐいぐいと腹を押して、サキュバスの内側からもおしっこを押し出そうとする。
 抵抗のしようもない屈辱に頬を染め、サキュバスは触手の中で藻掻いた。

「駄目!いやぁああ!!」

 ぷしゃぁ……と音を立てて液体が弾ける。
 それは、金色の弧を描いてマーラの口の中へ注がれていく。
 耐え難い恥辱にサキュバスは、苦しげな声で、喘いだ。

「あぁ……ああぁ……」

 凄まじい背徳感と屈辱が──サキュバスの中で卑屈な快感へと結びついてゆく。
 ごくり、ごくりとマーラが喉を鳴らす度に、サキュバスは、あからさまな官能の声を上げて身をよじった。
 流れが細くなってやがて止まると、マーラはサキュバスの股に口を付けて尿道から直に吸い上げる。

「んぁ……」

 ふるる、と、サキュバスの腰が震える。
 したたる滴を丁寧に舐めて、マーラは満足げに言った。

「甘露デアッタゾ」

 ぐったりと脱力したサキュバスの睫毛が震えた。
 じゅくり、と、再び触手達が動き出す。
 サキュバスは──犯される屈辱の愉悦に、酔い始めていた。


「んぁぁあああ……」

「ひっ、あ……」

「……んん……、あぁ……」

 三人の女魔の上げる快楽の声に、魔王マーラと、それに取り憑かれていた人修羅は密かに笑みを浮かべていた。
 何度もエクスタシーに上り詰めては果てて、それでも次の快楽を求める美しい雌奴隷を三匹も手に入れ、淫楽の宴はいつ終わるとも知れない。
 キクリヒメは人修羅の前に何度でも脚を開くだろう。
 支配される快楽に落ちたサキュバスとヤクシニーも同様。
 傀儡としては申し分のない人修羅の少年も、更なる女奴隷を捕える役に立つに違いない。
 その満足のあまり──姿を消した一匹の事をマーラはすっかり忘れていた。

「ふっふっふ……ワタシの召喚場をぐちゃぐちゃにした責任は、しっかーりと、取ってもらうーのです」

 凄まじい淫欲の宴から溢れるマガツヒで、場は満ちていた。
 尚更にご立派になったご立派な悪魔は強敵だが、バフォメットにはその対抗手段があったのだ。

「ELELOHIMELOHOELOHIM……AGLA AMEN!!」

 魔法陣から瘴気が吹き出す。と、同時に、その内側に現れたものがあった。

「きゃあっ!?」「うわっ!!」「えぇっ!?」「ああんっ!!」

「……ヌォッ!?」

 吹っ飛ばされたマーラが触手からサキュバスとヤクシニーを落っことす。同時に、催眠の切れた人修羅が、本当に我に返った。

「……なんだ?……うわっ、キクリ!?」

 胸の下で悶えるキクリヒメに驚いた人修羅が慌てて体を離す。

「あるじさま……」

 再び両手で引き寄せられ、人修羅はキクリヒメの胸の間に顔を埋めることになる。

「ちょっと待てって、キクリ!!」

 ふと顔を上げれば、魔法陣の中央に、巨大な──異常なほど巨大な緑色の半円がもこりと飛びだしていた。

「……なんだあれ?」

 半円の天辺で黄緑色の羽根のようなものがひらひらと羽ばたく。
 ずるりと顔を出した──緑色の巨大な男の顔に、キクリヒメが驚愕の悲鳴を上げた。

「……なぁに、あれ」

 脱力して床にへたり込んだサキュバスが、隣で喘ぐヤクシニーに訊ねる。

「あたしが知るわけないでしょ」

 ただ足元の触手をざわめかせるマーラだけが、場の主としてその異様な顔と対峙していた。

「……アバドン」

 マーラと同じ、魔王の一柱。魔王アバドンが牙だらけの口を開けた。

「久しいな、マーラ……以前の決着をつけようではないか……」

「望ムトコロ……!!」

 突如その巨大な口で襲いかかったアバドンを、マーラが巨体を振り立てて受け止める。
 マーラの巨体がぐんと伸びてその口内を突き上げると、大量の、唾液が飛沫を上げて降りかかる。
 アバドンはマーラを一度吐き出し、再びその口内へ閉じこめようとかぶりつく。

 凄まじい戦いを──人修羅達は呆けた顔で眺めていた。

「……なんか、ものすごいフェラチオ対決って感じ」

 サキュバスが呆れた声で呟く。

「……下品なのにも、程がありますわ」

 キクリヒメが真っ赤な顔を背けた。

「あのさ、キクリ、悪いんだけど、お尻の下にある俺のパンツ取ってくれる?」

 人修羅は気まずそうに股間を押さえたまま、脱ぎ捨てた服に手を伸ばした。

「……帰りましょ、そろそろ」

 ヤクシニーが腰布を巻きながら言った言葉に、三人は頷いた。

「……ねぇ、人修羅。あとでいい男でも喚んでくれる?」

「俺でいいじゃん」

「キクリが焼き餅やくでしょ」

「あのっ、わたくしは……っ!」

 ……人修羅達は、シブヤを後にした。


 ……魔王達の戦いはいつ終わるともなく続いている……。


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